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「さて、八丈富士に行ってみますか」「行ってみましょう」。八丈島には二
つの山があって、ちょうどひょうたん島のような地形だがその片方が
八丈富士だ。だんだん高度が高くなるとクロサカさんがクルマのスピードを落
とした。
「ほらそこに」「え?」赤い実がちらほら見える。「野イチゴ
です」。摘んで食べる。ほのかに甘い。
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中腹に山を一周する道路がある。そこを少し走ると牧場があった。八丈の牛乳
はすべて島内でまかなっているという。
牛たちは雄大な景色のなかのんびりと草
を哈んでいた。牧場の自動販売機で牛乳パックを買って飲む。濃くて美味い。
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そろそろランチの時間が近付いた。クロサカさんは満天望に帰
らなければならない時刻だ。最後に神湊まで行ってもらい、島酒「鬼ころし」の
醸造所の前でおろしていただいた。後は飛行機の時刻まで自力
でなんとかします。どうもありがとうございました。
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お礼を言って醸造所へ近付くと、あれれ、閉まっているようだ。裏のほうへ
行ってもみたのだが人の気配がない。今日は日曜日で休みらしい。その後
しばらく町を歩いて「あしたば蕎麦」の店の場所を紹介
してもらったりしたのだが、やはり日曜で休みだ。そうか、八丈島の散策は日曜
を避けるべきだったのだなあ。
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ヲサム君はスナック会社の営業で千葉地区を担当していると思っていたのだが、
実は八丈島も担当地区なんだそうな。
「八丈島の得意先にまだ行ったことがないんですよ」というので、それはサラリーマンとしては行
かなきゃいかんなと昨日から話していたのだがチャンスがなく、ヲサム君は挨拶
することなく帰ってしまった。
地図を見ながら
「このへんだよね」
「この少し先かな」
「行ってみよう」
もしなんだったら代りに挨拶していってもよい。
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そのお店は八丈島でいちばん大きな食料品問屋さんだという。
どうやらあれがそうらしい、と見当をつけて近づいていくと、表に恰幅のいいおじさんが立っておられた。
「あの人がご主人かも」と多少緊張したのだが、それは近所の人だったようで、今日はたぶん日曜
のせいだろう、目指すお店『浅沼卯平商店』はお休みだった。うーむ。恰好の営業チャンスを逃
してしまった気がするなァ。
浅沼卯平商店さん、ご縁がありませんでしたがご挨拶には伺ったのです。カ○ビー営業のシモタニヲサムをよろしくお願いしますです。
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