ふじうら旅日記
4日目
その1
出発間際まで
ホントに親切にしていただいた。
5月19日(日) 八丈島-羽田
帰る日の朝が来た。窓の外を見ると庭のビッキーの小屋の前にもうコバヤシ 夫妻が出ていた。ヲサム君は寝ているので小声で「私も行くから」と 待ってもらって一緒に朝の散歩に行く。
朝の海は気持ち良い。最後の日になってようやく陽が出て八丈小島 がくっきりと見える。しばらく遊んでいたら遠くからこちらに手を振る人 がいて、それはヲサム君だった。ときおりクルマが停まっているのだが人の姿 はない。ダイビングでもしているのだろうか。休日ではあるが人気 はあまりなく、それがすがすがしい。
朝食は洋風。ヨーロッパ風のインテリアにふさわしい。
八丈島にはアロエ がたくさん生えていて、昨日その話になったときクロサカさんが「明日 わからないふうにして出しますよ」と言っておられたのだが、それは アロエヨーグルトだった。
アロエの皮を剥いた透明なゼリーのような身が ヨーグルトの中に入っていた。どれを食べても健康的な朝食である。
ヲサム君は朝の便なので早々に帰っていく。満天望から空港まではクルマ ですぐ、ヲサム君を送ったクロサカさんはほどなく帰ってこられた。「さてまだ 時間はありますが今日はどこに行きますか」「島酒の醸造所に行こうと思 うのですが」。地図を調べて、まだ行っていない神湊(かみみなと)のほうに行 くことに決める。
私たちのつもりでは直接そこまで乗せて 行ってもらえればあとはなんとかするというつもりだったのだが、クルマに 乗ったクロサカさんは「○○に寄って行きましょう」とか「○○を見 たいですか」と誘ってくれて、ずいぶんあちこち案内していただいた。オーナー 貸し切り状態で、いいのかなァと思いながら、ついつい「行きましょう!」「見 たいです!」と調子に乗って甘えてしまった。ほんとにありがとうございます。
島の中央が少し細くなっていて、右折してその狭いところを横断すれば東岸に行 くのだが、クルマは曲がらずにまっすぐ行く。「千畳敷に行きましょう」 「はい」。そう言えば昨日の温泉で一緒だった島のおばちゃんが「千畳敷 にぜひ行きなさい」と言ってましたとマユミさんが言う。いちばんのおすすめ ポイントらしい。
途中、海岸道路があった。左が海で右は低い潅木地だ。「ここはバブルの頃別荘 としてずいぶん売れたんですが、とても住める場所ではないんです」。有名人 もいっぱいだまされたという。確かに目の前は海だしつい手を出 してしまいそうに見える。
千畳敷というのは大きな岩場で、溶岩が流れてきて海に出会ってジュッと固 まったものらしい。一枚岩というのとはまた感じが違っていて、部分的には ゴツゴツしているのだが、全体としては平坦な岩場で海に突き出している。 その上を歩くのもそう難しくない。天気はすっかり良くなっていて、初夏の光の 中に八丈小島がくっきりと浮かんでいる。爽快な気分だ。
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