ふじうら旅日記

4日目 その3






光るキノコも八丈島のキョンも見て
これでもう思い残すことはないね。

バス通りに沿っててくてく歩く。目的地は「八丈植物園ビジターセンター」だ。

入り口に門はなかった。道路から小径に入ると公園のようになり、次第に緑が濃 くなっていく。「いいとこだねえ」。昔の八丈島の道 はこうでもあったろうか、土の道の周りにさまざまな植物が茂っている。 それでも人間の手が入っているので、少し歩いただけで風景がどんどん変 わっていく。

ビジターセンターの建物で、あしたばアイスクリームを食べる。ちょうど抹茶 のような感じだ。たぶんあしたば蕎麦は茶蕎麦みたいなものなのだろうと想像 する。

電話ボックスくらいの展示があった。まわりを黒いカーテンで覆ってある。中に 入って暗幕を閉めると真っ暗になる。ガラス展示の中のキノコが蛍光を 放っていた。「あー、これが光るキノコなのか」。その展示のキノコは細 いしめじくらいだが、全体が光るせいかホタルよりずっと明るい印象だ。

思いがけず光るキノコを見ることができた。これで八丈島に思い残 すことはない。「もうひとつあります」「それは?」「キョンを見なくちゃ」

キョンの小屋は植物園のはじのほうにあった。 全部で30頭くらい、いやもう少しいたかな。 子育ての季節らしく、生まれたての子供もいて可愛い。

キョンの姿は「小型犬くらいのカモシカ」を想像してもらえば近いだろう。「うちの ベランダで飼えないかな」と思ってしまうほどの小ささである。

歩きを止 めるときに後脚をぴっとあげるのが特徴で、そこが可愛い。マユミ さんはさっそくその姿を真似していた。
八丈島のキョン
客も子供連れが多く、キョンの子供を見ることができたのでよろこんでいる。 入場料もなく、客の数もあまり多くなく、のどかでよい休日だ。

キョンの小屋からしばらくいたところにタクシーが停まっていたので「乗 れますか」「私は客を乗せてきたからダメだけど無線で呼ぼう」と電話 してくれた。「キョンの小屋の近くだ」と指示している。この植物園は中と外の 境界があまりよくわからない。なんだか植物園の中に道路が入り込 んでいるような感じで、待っているその場所まで森の道を抜けてタクシーが来 てくれた。

満天望に着くともうすぐ出発の時間。島酒を買いたいという私達をクロサカ さんは地元のショッピングセンターまで連れて行ってくれる。最後 までほんとうにありがとうございました。

飛行機に乗ってしまえば、一時間足らずで羽田。こうしてサラタビ八丈島篇も楽 しく完了したのである。さあ明日は仕事だ。





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