ふじうら旅日記
4日目
その5
深夜「懐かしきメンフィス」を求めて散歩に行き
この旅の目的を確かめる。
実のところBBキングの店の観光客相手のパフォーマンスにかなり不満なのである。
帰る途中で前を通った「ラム・ブギー・カフェ」の音のほうがよっぽど腰が据わっていた。
「いい音出しているじゃん」
明日はここに来ようと心に決める。
夜中に目が醒めて、少し考えた。
BBキングの店で眠くなったのも含めて、なんか面白くない。
俺はここに何をしに来たんだろう?
アメリカが初めてでブルースの経験もあまりない二人は「知識を得た」「見聞を広めた」でいいだろう。でも俺は?
ツアーコンダクターではなく、俺も一人の旅人だろう。何を求めてここに来たのだ?
深夜の散歩に出る。
町のあちこちにエルヴィスの残光が灯っている。
無人のビールストリートに足を向ける。
観光客向きの顔でないビールストリート、「素顔」は無理としても、昔の面影を少しでも感じたいと思った。
ビールストリートは2ndストリートを起点にして、河は逆方向つまり郊外に向かって伸びている。
途中、3rdストリートのところが工事中で行き止まりになっていて、これまでその先に行かなかった。バリケードをよけて、先に進んでみる。
その先にも店はあった。ほとんどはもう閉店していたが、音楽をでかい音で表に流している店もあった。深夜なのに大音量である。
その店の前に小さな公園があり、WCハンディの像があった。
それを眺めていると向かいの店の曲が「
アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー
」を鳴らしはじめた。メンフィスの店にシカゴブルースは流れていなかったので、この偶然にニヤリとする。
ジジメタルジャケットでもキーになっていたこの曲をこのタイミングで聴くとは。これもなにかの縁だろう。
♪ あんたを奴隷にしたいわけじゃない
♪ 料理を作ってもらおうとも思わない
♪ 俺はただ あんたとやりたいだけさ
あけすけな歌詞である。が、あえて深読みをすれば「いるものはいる。いらないものはいらない」というわけだ。さて、この旅で「いるもの」は何だろう。
俺はブルースの生まれた場所を見たい
ブルースの生まれた場所に立ちたい
そういうことなんだな。あたりまえのことだ、と確認して、安心して寝た。
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