YogYakarta
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黎明のボロブドゥールを貸し切り、
仏教遺跡の夜明けを満喫する。

3時15分起床。ドンさんと一緒にPurusaniへ行く、つもりだったのだが、ホテルにやってきたクルマにはもう皆乗っていて、そのままボロブドゥールへ。

朝もやのなかコーランが流れ、ライトアップされた遺跡が浮かび上がる。幻想的な雰囲気だ。係員と一緒に石の階段まで行く。階段をふさいでいるのは意外とセコい金網の扉。鍵を開けて中に入る。まだ5時前、細い階段は真っ暗だ。

ボロブドゥールに浮かぶ月 この日は満月だった。遺跡の頂上まで登ると仏像を覆う多くのパゴダが月明かりに照らされている。私たちだけのボロブドゥール、なんという贅沢だろう。月とボロブドゥールだけは太古のままだ。

遠くに稜線が見える 月は西に沈んでいく。明けの明星が見えてくる。東の方向に二つの火山があり、かすかに煙っている。きれいなコニーデ。富士山型の裾野が連なる姿は美しい。その二つ富士の背後からかすかに明るくなりはじめる。

光に照らされる仏像 仏像の肩に当る月光がゆっくりと朝の色に変っていく。青みを帯びた大気が、この遺跡の頂上にある多くのパゴダを包んでいる。


闇の中の撮影
6時にはじまる一般開放までの間、ダイトウさんは満足のいく撮影をし、私たちは豊かな時間を満喫した。

「使えるカットが5つはあったな」

ダイトウさんは手応えを感じている様子だ。


闇に浮かぶパゴダ
途中で小さなトラブルがあった。開いたドアに紛れて一般観光客が入り込んできたのである。それも静かに見ていればいいのだが、暗いものだからフラッシュをたくのである。こちらは絞り全開で微妙な光を捕らえようとしているのにフラッシュをたかれてはたまるものではない。やめてくれ、というとなにか大声で怒鳴っている。イタリア人のようだ。

とはいうものの、こちらはチームだし彼は一人だ。撮影の真剣さを感じたのかもしれない。そのうち死角になるほうへ行ってしまった。

明るくなりはじめた そういう邪魔者もいたが、ボロブドゥールの黎明の撮影は感銘深いものだった。

あの静かで大きな時間は忘れられない。この撮影隊の一行に加われたことに感謝する。

明るくなってきた。一般観光客も入ってくる。ここでの撮影を完了して、クロワッサンとゆでたまごの朝御飯を食べる。

制服を着た一群がやってくる。インドネシアの学生の修学旅行だ。私たちが奈良や京都へ行くようなものだろう。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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