Tarakan
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大いなる田舎タラカンには
穏やかな大国の空気が漂う。

タラカンの街角 タラカンは田舎である。インドネシアはじめての町がタラカン。というのは、初来日の外国人観光客が鹿児島から入国するようなものだろう。

空港の入国管理と税関は廊下に並べたベンチ。そこでパスポートを広げ、スタンプを押してもらう。規模としては成田空港に入るときの手荷物検査よりつつましい。高校の持ち物検査レベルだ。あっけなく通過する。通過してもなんにもない。ただただ暑く、空気は白く、道は乾いている。

町の向こうに緑の濃い気配がする。少し遠出をするとボルネオのジャングルに入ってしまうのだろう。ほんのすこしの空き地に人々が集落を作って暮らしている町だ。


路地の洗濯物 悪魔のジャマーンに教えてもらったBARITO TIMURというホテル名を入国書類に書いたので、入国管理のおじさんがタクシー乗り場までついてきて「このお客はバリトティムールだ」と運転手に告げる。村の入り口のような空港である。「5,000ルピアです」「リンギットしかないよ」「では4RM」。高いのか安いのか、どのくらいぼられているのか。またも貨幣感覚を失ってしまう。

ホテルは50,000ルピア++だった。「クレジットカードは使えません」。ルピアは持っていないので「じゃあ、後で銀行に行って両替して払うよ」ということにする。そこで銀行を探すがなかなか見つからない。市役所みたいなところで教えてもらって、15分ほど歩いたBNI(Bank National Indonesia)銀行にたどり着く。

200RM(マレーシアリンギット)→38万Rp(インドネシアルピア)。円がからまないともうひとつ貨幣価値が実感できない。(後でわかったが、この交換率はかなり悪い。この文章ではインドネシアの現地物価は1円→70Rp/1Rp→0.0142円で説明する。)ホテルの料金は710円ということになる。



壁から水の出るシャワー
このホテルのドアは重々しい彫刻の木で、アラジンの王宮の扉みたいな風情のある立派なものだ。寝床もピンクのベッドカバーで「王宮のしとね」のようでオモムキがあった。それにひきかえ風呂場はセコい。まず、水シャワーである。しかもシャワーのコックをひねると壁から水が噴き出してくる。シャワーの蛇口まで水が届いていないのだ。部屋と風呂まわりとのアンバランス。これがイスラムのホテルというものか。

ホテルのトイレでも、トイレットペーパーはない。いよいよ「イスラム=紙のないトイレ」の郷に入ったのだ。「買いに行かなくっちゃ」と思ったら、トイレットペーパーはホテルのロビーに売っていた。あるんなら部屋に置いとけばいいのに。ヘンな国だ。まあそれを言っちゃいけないのである。


看板のある道 銀行からの帰りに清潔そうな「フルーツパーラー」があったので生ジュースを飲んだ。3500Rp。先の換算率で50円。この店は母と娘二人でやっていて、チープだけど白いテーブルで非常に日本の喫茶店に近い。この価格で絞りたての生ジュースが飲めるので、前を通るたびに立ち寄ってしまった。夕方は現地の女子高生が甘いものを食べてたりして、なかなかよろしい。(なにがよろしいんだか)



c 1998 Keiichiro Fujiura


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