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一件落着したので晩飯を食いに行く。フェニックスホテルは繁華な通りに面していた。けっこうな人出だ。信号を待ちながら周囲の人を観察する。 |
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「女が薄着をしている」ということが印象的だ。肩を出したり、ホットパンツを履いたり、とにかく肌を露出している。もちろん東京に比べればおとなしいものだ。しかし周囲は女性がヘジャーブ(被り物)をしているイスラム国家である。 昨日までのジャカルタでは、大都会とはいっても若い女性はいいところブラウスとスカートという教員スタイルだった。ジャカルタの暑さだって相当のものである。シンガポールは「アジアの特異点」だなあと思う。 |
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この町がとても無防備に思えた。もっとも、財布をなくした奴が言ったところで説得力はない。 |
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夕食は中華系ファストフードでカレー4SPD、豆腐の煮物1SPD、カールスバーグ3.8SPD。 SPDと書いているのはシンガポールダラー。シンガポール空港で1万円が120SPD、オーチャード通りで122SPDだった。ここでは1SPD=83円で計算することにしよう。カレーが332円、カールスバーグが315円ということになる。 ファストフードの缶ビールが315円とは、かなりの高物価だ。 |
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ホテルのスタッフは若く、きびきびしている。トラブルへの応対もいい意味でビジネスライクだ。ホテルのバーは白人客でいっぱいだった。東京にいるのとほとんど変わらない。 例外はドアマンの男だった。かれは年配の男で、肌の色も濃く。フロントに立っている連中とはちょっと違っている。彼とは最初に「タクシーを探してくれ」と話したので、なんとなく面識ができた。ドアを出入りするたびにちょっと目礼する。 |
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ばたばたしているうちにその日は夜更けになってしまった。ようやく落ち着いて、やることもなくなったので夜中にフロントに降りていくとそのドアマンがいた。きょうはありがとう、と話しかける。 |
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「このあたりは表面上は都会だが、ちょっと郊外に出れば昔のままだ。 言葉?、普段使うのはマレー語と広東語だな。英語は仕事のためさ。」 |
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夜更けにホテルのドアにもたれてしばらくドアマンと話をする。シンガポール最初の夜である。 |
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