隣の席に座っていたオヤジは係員で、あとから別の客がやってきた。 長距離列車のせいか、けっこう豪華な内装だ。「アジアの旅」から連想される粗末な内装とはまるで違う。さすが東のオリエントエクスプレスを名乗るだけのことはある。 |
車内でいろんなものを売りに来るが、国境を越えるまでは酒は出てこない。マレーシア側で焼メシ3RM(107円)を買って食べる。 タイに入ってからは、缶ビール5RM(178円)瓶ビール10RM(357円)朝食10RM(357円)。 リンギットしか持っていないので、少しボラれている感じもする。 |
この列車は寝台車である。日が暮れてから係員が回ってきて、座席の間の板を立ててテーブルを作った。それから一度引き返し、今度は夕食のメニューを持ってくる。 こうなっていたのか。しかし焼メシを食べたばかりなので「私は何もいらない」と答える。係員は怪訝な顔をして「お前はムスリムか?」と聞いてきた。この、「飯を食わなければイスラム教徒」という発想が自然に出てくるところがおかしい。断食中とでも思ったのだろう。 なにも注文しないので「ちぇ、無駄手間だったな」と、ぶすっとした顔をしてテーブルを片づけて行ってしまった。 |
夜半に国境の駅バダンブサルに着いた。 全員、手荷物だけを持ってぞろぞろ列車を降りる。夜中のことでもあるし、強制収容所に行くといった風情である。電車の後方から降りて建物に入り、前方から出てまた同じ列車に乗り込む。その間の駅舎が入国管理なのだ。 無事入管を過ぎると免税店があった。酒が欲しかったが、1リットルの大きなボトルばかりだ。マーテルが103RM(3,677円)で売っていた。 |
今回ほとんど旅の資料を持ってきていないのだが、タイについてだけ雑誌の切り抜きなどが若干ある。日本でいちばん手に入りやすいアジアの資料はタイとバリだろう。列車のなかでそれを見る。 情報があるとそれに囚われるのがわかる。「損をしたくない。効率的にうまく全部見たい」という欲が出てくる。 |
この列車にはトイレが二つある。洋式と和(?)式。そういえば日本でもそうだ。どちらにもシャワーホースが付いている。水で洗うための新兵器だ。田舎のトイレでは水桶と手柄杓(ひしゃく)が備えてあることが多い。トイレットペーパーもついていたが、夜中になくなった。 |
近席の子供が寝るとき母親に「グッドナイト、トゥモロー」と言うのが聞こえた。このタイ人金持ち家族はマルチリンガルなのか。 |
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