ヲサム旅日記

8日目 その1






サラタビ第11章:第8日目 その1。ブータン、パロ〜タイ、バンコク

ついにブータンを発つ日。
ガイド二人は最後までいい仕事をしてくれた。

朝、4:30起床。飛行機発は7:00。普通なら2時間前には空港にいるのだろうが、ここはブータン1時間前くらいで良いらしい。起床してサッとシャワーを浴び、身支度をする。5時にフジウラさんの部屋をノックすると、どうも寝ていたような雰囲気…。そういえば、もう日本の時間を意識することもなくなっていた。今ごろ8時。
昨日の話だと5時から5時半にかけて食事だと言っていたが、誰もいない・・・。かろうじてフロントに一人従業員がいたので、食事を頼んだ。すると、食堂から戻って来て「Cookerがすぐ来るから・・」との事。まだ、料理人来てないようだ。5時からじゃないのか?すると、ようやく、カルマやミンジュがやってきた。時間、大丈夫?と尋ねると「5時40分くらいまで食事で、5時45分に出発。」という。

そんなんじゃ、まにあわね−ぞ、と思ったものの、内心まっ、いいかなとも思っていた。通常の海外旅行だったらこんな余裕はないし、恐らく、かなりびびっている事だろう。でも、この1週間、ブータンで過ごして、その余裕が生まれた。多分、ブータンだったら飛行機も待ってくれてるだろ、勝手にそう思っていた。

結局、6時頃にホテルを出発。10分くらいで空港に到着した。カルマやミンジュは勿論、何もあせっていない。そんな、こいつらの顔を見るのもいよいよ最後なんだと感慨深くなった。最後に記念撮影。
お別れの記念撮影
さっ、最後の仕事をお願いします、って思ったらサヨナラ!?

最後にどうやって手続きをするだとか、TAXをいつ払うだとかしてくれないの?ガイドでしょ?彼らは空港の中には入らず(入れなかったのかな?)最後の挨拶と握手。まあいいのだけど。彼らと最後の"あっさり"としたお別れをし、空港の中に入った・・・、と入ったはいいものの、やっぱりわからない事だらけ。あわてて入り口に逆戻りし、幾つか手続きについて尋ねた。すんなりは別れられないものである。

荷物のチェック、続いてチェックイン。ものすごく簡単。日本の国内線よりもずーっと簡単。少々恐ろしくなった一方で、これまたブータンだから大丈夫かとも思った。

と・こ・ろがである。イミグレで出入国審査を受けていると、既にイミグレを通過した西洋人がつかつかと寄ってきた。すると、そのままイミグレの審査官の所に来て、手紙を見せ、空港入り口にあるポストを指差した。そこで、何やら会話を交わした後、そのままイミグレを逆戻りし、難なくポストでその手紙を投函した。そして、またイミグレをNo CHECK で難なく通過し、搭乗待合室まで戻っていったのである。さすがにイミグレを逆流するというのはなんとも暢気というか、いい加減というか。

さらにはその後の荷物検査(X線撮影)も、検査官は荷物が通過し、テレビに中身が映っているにもかかわらず、近くの職員と話をしており、画面を見ていないのである…。大丈夫だろうか…。まぁ確かに、現段階でこの国にまで来て危ない事をする人間もそんなにはいないだろうが…。

こんな不安を胸に抱え、一方でこれからこの国が大きく変化していくのと同時にそんな環境も変化することを期待しつつ、搭乗待合室に向かった。小さい事かもしれないが、出入国審査とは、国が大きくなる上での、まさに通過点の一つのような気がした。

しかし、やはり2時間前に到着しなくて良かった…、特に待合室では時間をつぶせるような空間はなく、程なく搭乗時間になった。ヤツらは最後までいい仕事をしてくれた。

徒歩で飛行機へ
飛行機までは、勿論着いた時のように徒歩。機内に入ると、手続きが遅かったせいか、コバヤシ夫妻と我々は一番後ろの席だった。席についてホッとすると、スチュワーデスが何やら聞いてくる。今一つ、正確には聞き取れなかったが、どうも荷物を確認しろということで、一旦、機外に出た。

すると、飛行機の足元には我々の荷物がポツーンと置かれていた。

ここでは、どうもこういうルールのようだ。機内へ荷物を運び入れる際にも、再度チェックしなくてはいけないらしい。傍にいる兵士にOKサインを出すと、彼らはそそくさと飛行機の中へ荷物を運んでくれた。よく、夜行バスでスキーとか行く時に、運転手さんが大きな荷物をバスの横っ腹のトランクにいれるような感覚だった、わかってもらえるだろうか?いや、無理か。とにかく、今から違う国に行くという感じではなかった。いよいよ離陸である。

いつもの事だが、海外からの帰りの飛行機の中は嫌いだ。誰もがそうであるように現実がまざまざと呼び起こされる。それと同じように、ワタクシもまた現実だよ…と感じながらボーっと機内で過ごしていた。

程なく機内食が運ばれてきた。しかし、何やらおかしい。フジウラさんとワタクシの機内食が違うのである。よくあるのが、ベジタリアンとそうでないもの。とはいえ、何も説明もなくただ、渡されただけ。さらにはお隣のコバヤシ夫妻の機内食の蓋には「Crew」と書いてある。蓋を開けると、やはり帰りはブータンで作られたものだけあって、今までブータン本土で食べてきた食事と似たようなもの。

これでブータン料理を食べるのも最後かと思い、味わって食べていると、お隣のコバヤシ夫妻が何やらヒーヒー言っている。どうしたのかと聞くと、食事がものすごく辛いらしい。そういえば、「Crew(乗組員)」と書いてあった。

もしや。少しだけ食べさせてもらと…。無茶苦茶辛い。ホンノ一口、スプーンの先にほんの少しではあったがとてつもなく辛い。正直、こんな辛いものはブータンに来て初めて食べた。口に入れただけで火が出るくらいだった。隣を見るとその機内食を割り当てられたコバヤシ奥様が涙を流している。ご主人の方は辛いもの好きらしく(それでも汗をかきながら)、食べていた。

そうである、彼らに割り当てられたのは、ブータン人の乗組員用の食事であったのである。その姿を見たスチュワーデスはクスクス笑っているし、ヒーヒー言っている我々をみたCrewの一人は「美味しいか?」とまで笑いながら聞いてくる始末。そのまま、フジウラさんにその機内食を渡すと、フジウラさんはそれをウマイウマイと言って、食べていた。食べ尽くした後、やっと辛い食事に出会えたと、汗をふきながら、満足気な顔であった。

これが、よくいわれるブータン料理の本当の辛さだったのだろう。ワタクシには辛すぎてダメだったが。最後の最後に、しかもブータンを離れた後に"ブータン"をまた味わう事ができた。

離陸してしばらくすると窓の外にヒマラヤが見えた。その頂は雲を突きぬけている。ヒマラヤは飛行機の中からしか見ていなく、そしてずっと遠くにはあるのだが、その、えもいわれぬ雄大さ、偉大さをぐっと感じることができた。そしてワタクシの中に呼び起こされかけていた現実を忘れさせてくれるような、不思議な空間がそこにはあった。

これからバンコクへ、そして日本に帰る。でもヒマラヤを見てから、何故か自然と気持ちが楽になった。あと1日のんびりしよう、そんな気分にさせてくれた。
窓の外のヒマラヤ




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