ふじうら旅日記
1日目
その2
シカゴの街を南へ歩く。左耳が冷たい。
宿に着いたらとりあえず周囲の地形探索。それが基本だ。まずは軽い散歩に出ることにした。ハウスオブブルースホテルはシカゴ川のすぐ北側に立っている。
川の南が「ループ」と呼ばれる比較的古い地区。川の北には「マグニフィシエントマイル」と呼ばれる高級店の通り(東京でいえば銀座、ニューヨークでいえば五番街みたいなもんだろう)がある。
ホテルを出て右へ行くと川があった。南に向かっているわけだ。なかなか立派な橋を渡っていると、ちょうど下の川を観光客を乗せた船が通った。みんなハウスオブブルースのほうにカメラを向けて写真を撮っている。
見上げるとそこに不思議な形の駐車タワーがあった。
風が冷たい。左耳のほうがより冷たいようだ。左は東。ミシガン湖のある方角だ。空港では東京と同じ程度と思ったが、湖を渡る風は冷えているらしく、風の冷たさが違う。
ビルの気温表示は13℃〜15℃を示していた。温度を表示しているビルが多いのは気温が重要な関心事なのだろう。華氏ではなく摂氏表示なのは意外だった。
さてどこに行こうか。地図を見ながら相談する。「とりあえずユニオン駅まで行きましょう」と歩きはじめる。
この通りはステイト通り。ジャズのスタンダード曲「シカゴ」で「On State Street」と歌われる目抜き通りだ。ちなみに「シカゴ」という曲はたくさんあるが、この曲は「
Chicago (That Toddlin' Town)
」と呼ばれる。Toddleとはぶらぶら歩くこと、まさにいま私たちがやっていることである。
ダイスケ君が「何か食べたい」という。飛行機の中でなにも食べていないから当然だが、さーて。アメリカでの最初の食事はなんにしよう。「マクドナルドはどう?」「いいですよ」
セットで4ドル99セント。ヲサム君もアメリカは初めてなので、二人の記念すべき米国での最初の食事はマックということになった。店内にシカゴのスポーツ選手ゆかりのグッズがいろいろ飾ってある。ブルズの物がいちばん多いように見える。
シアーズタワーに登り、ユニオン駅に行く。
CTAのビジターパスは、なかなか手に入らない。
Jackson Bld.を右折して、駅方向へ。地図によると途中にシアーズタワーがある。そこだけ人が多い。当然のことのように中に入った。空港のような持ち物検査があって、なかなかモノモノしい。
エレベータで中層まで上がると、長い長い列が待っていた。ここに至ってはじめて入場料9ドル50セントという表示がある。自分の後ろにもう列ができはじめている。いまさら降りられない。策略にまんまとのっかって、税込み10ドル45セントという結構な料金にも関わらず、ものすごい人である。「金を払うのにも待たされる」というような混みようだ。
「なんでこんなに人が多いのかな」「バカと煙は高いところに昇りたがるというからね」世の中バカが多いということか。「オレたちを含めてね」
アメリカ国内の観光客、ドイツ系、スペイン系、東洋系。ここは世界の観光地なのであった。
ようやく展示を見ることができた。短いシカゴ観光案内の映画。シカゴのビルの歴史。世界には「建物好きの文化」を持つ町というものがあって、シカゴはそれらしい。
そういえば以前旅先で知り合いになったシカゴ人がシアーズタワーを自慢していたのを思い出す。あれも「建物好き」がさせた発言だったのかもしれないなァ。
ようやく(ようやくばっかりだ)順がめぐってきて展望台に登ってみれば、まあ、なにほどのこともなくいわゆる展望台の景色。かかっている音楽が、シカゴ(さきほど書いたThat Toddling Town)、スイートホームシカゴなどゆかりの曲ばかりなのが面白い。
途中でエンターティナーがかかったけど、スティングの舞台はシカゴだったかな。そういう気もする風景だ。
しかしシカゴの全体の地形や位置関係がわかったし、ミシガン湖がこの高さから見ても向こう岸などまるで見えない本当に海のように大きい湖だということもよくわかった。
「リグレーフィールドはあれだよね」などと、これから行くかもしれない場所を探して、「あー案外遠いなあ」などと言いながら小半時を過ごす。
ユニオン駅はシアーズタワーから歩いてすぐ。古風なたたずまいを持つ建物だ。古びた階段(映画アンタッチャブルで使われたという)を通って地下に降りる。なかなか良さそうな軽食屋などある。だいたいが駅の食堂は好きなんだ。
アムトラックの発券場なども見つけて、出発日の予行演習にはなったのだが、CTAのビジターパスを駅では買いそびれた。
どうもこのビジターパスに縁がないらしい。CTAの駅にもぐって聞いてみると金網から出てきた(防犯用に金網の中に入っているのだ)係員に「ホテルで売ってる」と言われ、その言葉を信じて近くのホリディインに行けば「ここにはない。表通りにある両替所で売ってる」と回され、そこへ行ってみたら休みだった。どうもうまくいかない。
こうして数時間歩いてみたところ、シカゴはどうやら歩くには広すぎる街らしい。地下鉄を使って効率的に回ったほうがよいんだが。
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