「あの頃は ふたりとも ハッ」と和田アキ子が歌うこの曲はアスクルのCMで一気に復活しました。
この曲は1974年2月、和田アキ子の15枚目のシングルとして発表されました。その頃の彼女は二年ほどヒット曲が無く、その後もヒットに恵まれない状態でした。この歌はいい曲ですがしばらく忘れられた格好になっていたわけで、CM以前のベストアルバムにはあまり収録されていません。
彼女はソウルシンガーとしての素質を持っていたのに「売り方を間違えた」という気がしてなりません。紅白でよく歌う「あの鐘を鳴らすのはあなた」の発表が1972年3月(古い日記の二年前)。それから30年経っても同じ歌が代表曲というのは、ずっと芸能界の前線にいただけに寂しい気がします。
芸人根性というか、どんな仕事でも受けるという態度が、彼女を見る世間の眼を「ゴッドねえちゃん」にしてしまったという不運もあるとは思いますが、それに甘んじたと言われても否定できないでしょう。
いまだに「もう悩み無用 あなたの髪きっと生えてくる」などとリーブ21で歌っているのを見ると哀しくなってしまいます。あのCMはアスクルのヒットに追従して、しかももっと安手に作ったという印象です。
アスクルのCMがオンエアされた頃、和田アキ子は30年間在籍していたワーナーからテイチクに移籍しました。この移籍とCMで歌が使われたことが関係あるかどうかは知りませんが(古い日記はワーナー原盤)、もっと仕事を選んで、円熟期の名曲名唱が生まれればいいなあとは思います。
古い日記の作曲は馬飼野康二、サウンドは当時流行っていた「チェイス」の「黒い炎」。同じブラスロックでもBST(ブラッド、スエット&ティアーズ)よりシンプルで攻撃的なリフを、パクっています。
チェイスは和製ポップスに大きな影響を与えています。BSTやシカゴがジャズやクラシックの影響を受けた高度なものだったのに対し、チェイスは単純明快なサウンドだったので好まれたのでしょう。ディスコサウンドや打ち込みブラスにまでその名残を感じることがあります。モロパクの代表選手は欧陽菲菲の「恋の追跡(LOVE CHASE)」。曲名までそのまんまです。トランザムというサウンドコピーバンドもありましたね。
FGODはこのCMが流れていた2001年5月に、あっとぺっぷでのアンコール曲としてステージに出しました。コピーしてみるとこのリフは案外ラテンぽいのでした。あのスカスカのリズムパターンをベースで弾きながら歌うのは難しいのですが、慣れると快感でもあります。
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