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もう一組は地元の男たち。4人でなにかを飲んでいる。言葉がまったく通じないので、男たちを指差して「同じもの」を頼んだら暖かいココアだった。
テーブルは通りのどまんなかに広げられている。クルマは、この店のテーブルをよけながらおずおず通っていく。図々しい店だ。目の前にAZNURの看板を出した商店があるが、いまはシャッターが閉まっている。ホテルの人はこの屋台を「アズヌール」と呼んでいたが、正確にいうと「アズヌール商店前の店」ということになるのだろう。
いつまで経っても料理を作る気配がない。注文も取りに来ない。カレーの香りもしない。まだこれからなのだろうか。娘たちは材料の仕込みをしている。じゃっとニンニクをいためる。いい匂いが道路に立ちこめる。少し期待が高まる。
そこへあいにく雨が降ってきた。男たちはココアだけでそそくさと帰ってしまう。店の娘たちはコンロの上にパラソルを広げたりして雨を防いでいたが、風も吹くし火の点いたコンロが傾くしで、危ないことこのうえない。雨が強くなったのでテーブルをアズヌール商店の前に移動する。ここには狭いながら軒先があって雨をしのげる。
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