Jakarta
次へ


ホテルのバーテンと話をする。
日本の女について、バドゥイについて。

1階の食堂が、夜はバーになっていた。そこに行って飲む。ジャックダニエルス一杯18,000rp(255円)。他の町ほどではないが、酒瓶は大事そうに置いてある。気の良さそうな若いバーテンがいた。

「表に街娼(ストリートガール)がいるね。」
「あれは、ガールじゃありませんよ」
「あ、ゲイかぁ」

そういえば上から見てもなんだか大柄な女だと思った。

だいたい、まともな女なら自分で客をつかまえないでポン引きを使うよなあ。自分で出歩いているというのは男だったからだ。なるほどね。


「日本の女は綺麗だ。日本の女は好きだ」
と、このバーテンは言う。
「日本の女を知っているのか」
「知ってる。雑誌で見た」

インドネシアでは日本の雑誌は人気がある。ただしヌードのページは削除されている。ひところの日本のようにその箇所が黒く塗られているのではない。そのページごと切り取られている。したがって日本人旅行者がプライベートで持ち込んだ雑誌は彼らの間では貴重なものである。

「こんど来ることがあったら、日本の雑誌を持ってきてくださいよ」



バドゥイを知っているか、と聞いてみた。
「知っている」
「彼らを愚か(STUPID)だと思うか」
しばらく考えている。
「いや、STUPIDとは思わない。
JUST PRIMITIVE(単に原始的であるだけ)だ。」

さらに
「私は彼らが好きだ。彼らは自然だから」
と言う。

さっきまで「日本の女は好きだ」と話していた、ごく普通のジャカルタの若者である。インドネシアの人々の少数民族に対する視線がここにうかがえる、といっては言いすぎだろうか。

その答えは少なくとも「自分たちは優れ、進んでいる。彼らは劣り、遅れている」というものではなかった。



c 1998 Keiichiro Fujiura


TOP PAGE表紙へ
GO MAPマップへ
GO PREVIOUS前へ
GO NEXT次へ