Chiang Saen
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今日泊る宿がなかなか見つからない。
バックパックを背負って埃っぽい道を延々歩き廻る。

国境の港町だから宿くらいは簡単に見つかるだろうと高をくくっていたのだが、そうでもなかった。

船着き場の係員らしき男に「ホテルはどこだ?」と聞くと、ごく適当に川下を指差す。それに従って1キロほど歩いてみたのだが、なかなか見つからない。川沿いの街道をかなり下ったところでHOTELの看板が見つかった。見に行くとなにやら怪し気なホテルである。せっかくメコンまで来たのにこの建物は川からも遠いし、地元売春婦の連れ込み宿のような感触がある。気に入らないので、また1キロの道を歩いて船着き場まで戻る。

帰りはメコンの河岸を歩く。白い豪邸があった。「これがホテルだったらいいのだが」と近付くと個人邸らしい。「豪華なものだ」と見とれていたら、獰猛な面相をした大型犬が近づいて来た。本気で噛みそうな顔をしているので早々に立ち去る。

藁葺きの粗末な小屋がある。農作業用の小屋か、あるいは川の増水を見張るための寝所のようだ。屋根も夜露をしのぐだけのものだし、床はでこぼこしている。

「最悪、ここで寝るか」とそこらに座ってあたりの様子をしばらく伺ったのだが、周囲の河岸はけっこう人通りもあり、この小屋に寝ていると夜中に誰か来るかもしれない。あきらめて別の場所を探すことにした。


さきほどの船着き場まで戻る。ゴールデントライアングルまで行けばホテルがあるというのだが、それはたぶん観光用の高額なホテルだろう。まだ午前中なのでもう少しこのあたりを探してみたい。

バックパックの背中に汗をしみこませながら、今度は川上側へ歩く。川上はゴールデントライアングルへの道なのでいくらか賑やかだ。川沿いにバスも走っているし、期待できそうな予感がしてくる。

ほどなく「Chiang Sean Guest House」という看板が見つかった。川端で野宿でもいいか、と思いはじめていたところなので、ゲストハウスならオンの字だ。一泊70B(210円)。昼前なのでどの部屋も空いている。角部屋の「A室」にする。設備は扇風機のみ。トイレと水シャワーは共同だ。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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