Chiang Rai
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ソンクラーンが始まった。水の勢いが昨日までとまるで違う。
氷で冷やした凍るような水の塊をガーンとぶつけられる。

いよいよソンクラーンの日がやってきた。朝飯を食ってヒッピーバーまで行くと、その途中でもここ数日の比ではない激しさで水が飛んでくる。昨日までのは、ホンの小手調べだったのだな、と知った。

ヒッピーバーの前にはすでに大きなポリバケツが置いてある。水が満々と入れてある。ホースに繋いだ蛇口は全開。水はひどく冷たい。

従業員、外国人客、いろいろな人種がいて、すでにチームの気合いになっている。店の前の通りはけっこう広く、交通量もある。しかも信号の前なので相手は停まる。攻めるには都合が良い。

それなりにルールがあるようで、僧侶、オーディオを持っている人、箱を持っている人には水を掛けない。バックパックを担いでいても、人にだけはかけられる。いちばん狙われるのは可愛い女の子、これは世界共通だ。ヒッピーバーチームに参加している白人娘も淡いブルーのシャツなので胸はスケスケになっている。

水鉄砲はあまり怖くない。大きなバケツでガツンとやられるのがいちばん効く。それとやっぱり氷入りはダメージが大きい。水掛けの時間は「正午から日没まで」のようだ。2時間もやっているとけっこう寒くなる。

入墨の店長が太い竹筒を持ってきた。そこに氷とメコンウィスキーを一瓶まるごと入れて回し飲みする。最初はコップに注いで飲もうとしたが、店長が「そんなことするな。こうして飲め」と竹筒からあおったので、それに倣ってあとはガブ飲みだ。

重い水を振り回すのもだんだん疲れてきたので、新しい戦法を開発する。氷水を柄杓に入れて、信号待ちしているバイクに近付き背中に注ぎ込むのだ。これは効く。効くが、道路は水びたしで滑りやすいので命がけの作戦である。しかもその途中で周囲の車からも攻撃を受ける。信号が変わるとクルマは被弾を避けて走り出すので危険は倍増する。

にもかかわらず、誰もがこの危険な行動に参加した。もはや冷静な判断は存在しない。「掛けるか、掛けられるか」である。

ともかくソンクラーンの期間は祭りに没頭しないとけっこうたいへんだ。カメラは厳重にビニールにくるんで行ったが、それでも衝撃で道路に落とす可能性はある。早いうちに撮影して後は手ぶらにしよう。

寒くなったので店の中に入って一杯やっていたら、入り口が騒がしい。素朴な顔をした若者が竹製のコップを差し出していた。農家の若者が自作のどぶろくを売りに来たらしい。これはちょうどいい。カメごと買って皆で飲む。米から造った白い酒で甘くはないが、そう強くはなさそうだ。

見るとまたスイス人とタイ人が入墨を自慢しあっている。濃い店だ。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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