ButterWorth
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ホテルの周りは歓楽街。
流行遅れの日本語カラオケが哀しく響く。

夕刻になったので、漁港に戻る。港の近くの公園の水道で水浴びをする。暗くなってきて足元が危ない。公園の熱帯樹林はもう真っ暗だ。

「俺たちはバターワースに戻ってカラオケに行き、明日7時に起きる。一緒に行くか?」

鉄道の宿舎に泊まり、明日またクアラルンプールまで運転して帰るらしい。宿舎は<AC(エアコン)なし、モスキートあり、朝7時起き>と聞いて、断わる。

「いや、ペナンは初めてだし、この島に泊まっていくよ」

そうか、とホテル探しにつきあってくれた。「ビーチか?センターか?」よくわからないので「古い建物のあるところ」と言ったら了解したらしい。タクシーに乗ってふたたび島の表側(船着場のあるほう)へ戻る。

近くにあった別のホテル「現代大旅社」 途中で右に折れ、高い建物のある一角へ入った。
「このホテルでどうだ」
私がひとりでフロントへ行き値段を聞くとバスタブ付きでNET98RM(3,498円)。クルマに帰って「ここでいいよ」と荷物を降ろす。

「そうか気を付けてな」
「ありがとう、写真を送るよ」
「日本の映画が俺を必要とするときは呼んでくれ」
「あはは。じゃあな」
と別れる。


このホテルはThe Continental(五州飯店)という名前で、中華系だ。このあたりは古い植民地の中心らしくて窓から教会らしい尖った屋根が見える。

道路に出てみると案外明るかった。ネオンが多い。ここは歓楽街のようだ。

ホテルのすぐそばにカントリー&ウェスタンの店があったので入ってみる。ビール5RM(178円)。これはHappyTimeだからで、後でもう一度いったら13RM50(481円)だった。白人観光客が多い。リゾート客が夜を楽しみに来る一角らしい。

中華料理屋があったので、ひさしぶりに酢豚を食った。通りを歩いてホテルへ帰るとまたもポン引きが近づいてきて「マレーガール150RM(5,355円)」。また値段が下がった。リゾートとは言ってもKLよりは物価は安いらしい。

いったんホテルに返る。トイレの水が流れないがちょっと直したら流れるようになった。こんなのは安宿ではよくあることだ。

左足がすこし膿んでいるので(塩水で洗ったのは良いことか悪いことか)包帯を捲き直す。スパイスと油の混じったエスニックな匂いがやや鼻につきはじめているのを感じる。ちょっと体調が落ちているのかもしれない。


ホテルにいても暇なのでふたたび道に出る。「町に出る」というほど遠くではない。ホテルから出ればそこが歓楽街である。歓楽街といっても、田舎の温泉街程度のものだが。

なんだか薄着の店がいっぱいあって、カラオケ「姫」「陽子」「静」とある。George Townとはそういうところなんだな。

ホテルのバーにウィスキーがないので、覚悟を決めて「MIKI」に入る。

中国系マレー人のママがいて、4杯ウィスキーを飲んで161RM(5,747円)。もっとボラれるかと思っていたので「そんなものか」という感じ。

店の女の子に「どこで働いているの?クアラルンプール?」と聞かれる。どうやらKLで働く日本人が憂さ晴らしにやってくる場所らしい。現地の日本人が時代遅れのカラオケを唄っている姿は哀しい。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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