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I went to the pilot room of Oriental Express. |
パイロットの名前は「ジャマルディーン」といった。副パイロットの名前は、と聞いたら彼はふざけて「アジノモト」と言う。その男の知っている日本の代表は味の素なのだろう。 |
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狭い運転席に座って、吹き抜ける景色を眺める。「おー、マレー鉄道の運転席だぜー!」という感じ。 停車しない駅を通りかかるたびに、アジノモトは太い腕にさらに布を捲いて、金輪に皮袋のついたものをひったくるように受け渡している。なんだろう。郵便の包みだろうか。 |
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「それはなんだ?」 「確認システムだ」 電車がどこまで通過したか確認するためのものらしい。電車の標識はカタカナの「ト」の字の形をしたもので、横棒が下がっていれば「OK」。横棒がまっすぐならば「NG」だそうな。 |
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ジャマルディンはタイピンの生まれだという。電車が実家の近くを通ると「お父さんに聞こえるように」大きな汽笛を長く2つ鳴らした。それを聞いてお父さんは息子が元気で働いていることを知るのだという。なんだか芝居の中にいるようだ。 |
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アジノモトの知っている日本はトウシバとかカワサキだけだ。ジャマルディンは「日本の映画に出たい」という。「映画?」「俺はバイトでモデルをやっているんだ」と雑誌の切り抜きを見せる。へー、鉄道の運転手でモデルか。マレー鉄道はけっこう自由な職場なんだな。 「なんで日本の映画なんだ?」 「日本の映画に出て日本の女と寝てみたい」 どういう映画を見ているんだ、こいつは。 |
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Co-pilot "AJINOMOTO". Of course it's a joke name he called himself. That was the best name he knew about Japan. |
「腹が減ったな。飯にしよう」 わけてやるよ、これを食べろ、と新聞紙に包んだ飯を渡された。小エビのはいったナシゴレン(炒飯)。暑いなかを持ってきているからなんだかすえたような匂いがする。しかしもちろんニコニコして食べる。 |
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