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まだ時刻が早いので、客は私しかいない。「1C」の席に座ってぼんやりしていると、「1A」の席に制服を着て帽子をかぶった男が座った。膝に乗せたアタッシュケースを開いてなにか書類を調べている。 |
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目が合うと男は軽く笑った。浅黒い肌で、人懐っこい笑顔。なかなかいい男だ。話しかけようとすると男が先に口を開いた。 「I am the pilot」 パイロット?あ、この男がこの電車の運転手か。しばらくすると副パイロットという太った男もやってきたので挨拶する。 |
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I came across the pilot of this train when I got on board. His name is Jamaluddin. |
出発時刻が近づいて二人は運転席へ行った。「1A」の席にはなにやら口うるさい中国人の婆さんが座って、いろんなことに文句を言っている。私の隣、「1B」は空席だ。昨夜珍しく眠れなかったので窓にもたれて少し眠る。 |
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すこし眠ったら元気になったのでドアの窓から顔を出して写真を撮ったりしていたら、こっちを向いていた「パイロット」と目が合った。次の駅で彼は点検のためにプラットフォームに降り、ドアの外を通りかかった。 「運転席に来るか?」 「いいのか?」 |
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当然行く。荷物を席に残していくのがちょっと気がかりだが、めったにないチャンスだ。 |
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