Better Days
Walkin' Blues
ウォーキン ブルーズ
(Robert Johnson)

ウォーキンブルースは伝説のブルースマン ロバート ジョンソンの曲で、取り上げられる回数は有名な「クロスロード」よりも むしろ多いと思います。FGODの演奏は、この曲を白人ブルースバンド「Paul Butterfield Blues Band」がアレンジした「New Walkin' Blues」を元にしています。

古いブルースらしく歌詞に一貫性がなく、歌い手によって違ったり他の曲でも使われる歌詞が入っていたりします。 共通するのは足踏みをするようなリズムとバックのギターのオクターブを使ったフレーズです。
元来のひとりでやるスタイルでは低音弦で「歩くような」リズムを刻みながら、高音弦で合いの手を入れます。自分で足踏み(ストンピング)しながら歌うこともあります。

朝起きると靴を探さなくちゃいけない。
あの『歩き回るブルース』がまとわりついているから。

Walkin'Bluesという言葉は、ブルースが靴を履いて歩き回っている姿を思わせます。自分が寝ている間にそいつが勝手に自分の靴を履いてどこかへ出かけてしまうような。自分の中にブルースという悪魔を飼っている男、というイメージです。

ロバートジョンソンについて過度に「悪魔的」と思いすぎているのかもしれませんが、彼の歌にはときどき「どうしてここにこんな言葉が置いてあるのかわからない」呪文のような言葉が出てきます。例えば、スイートホームシカゴの「1+1=2 2+2=4」という歌詞も唐突な感じです。

この歌詞にある「Brooks run to the ocean, Ocean runs to the sea(小川は海へ 海は大洋へ)」もそういうロバートジョンソンの呪文のような言葉だと思っていました。しかしTANIYANさんにBBSで指摘されて気が付いたのですが、この歌詞はポールバターフィールドバンドのカバーでは歌われていますがオリジナルのロバートジョンソンの唄には入っていないのです。

ポールバターフィールドはいったいどこからこの歌詞を持ってきたのか?また、なぜこの曲に使ったのか?
謎ですが、参考になりそうな材料を紹介してみます。

  • この曲はサンハウスのスタイルによく似ており、ロバートジョンソンはサンハウスからこの曲を習った可能性が高いと言われている。
  • 「Walkin' Blues」の原型と言われるサンハウスの曲の名は「My Black Mama」。そのなかに「Brooks run into the Ocean」という歌詞は入っていないが、「Some people tell me the worried blues ain't bad, It's the worst feelin' that I ever had」という歌詞は唄われている。
  • 「Brooks run into the Ocean」という名の古いデルタブルースがあって、Mississippi Fred McDowellの録音が残っている。
  • Muddy Watersが無名時代(1941年8月)いわゆる「プランテーションレコーディング」で録音した「Country Blues」に「Brooks run into the ocean, Ocean run into the sea」という歌詞が出てくる。
  • その録音は「ロバートジョンソンを探しに来たが見つからないので」マディジョンソンが代役として採用されたものであり、曲想もよく似ている。本人も「この曲はWalkin' Bluesをヒントにした」とコメントしている。
  • 後年Muddy Watersは「Country Blues」とほぼ同じ歌詞を「Feel Like Going Home」という曲名で再発表した。
  • ポールバターフィールドバンドの「New Walkin' Blues」は前半はロバートジョンソンと同じだが、後半はマディウォーターズの「Feel Like Going Home=(Country Blues)」の歌詞とほぼ同じである。
後は推測なのですが、ポールバターフィールドは似たようなデルタブルースのなかからいくつかの歌詞を選んで再構成したのでしょう。彼にとって「Walkin' Blues」の歌詞と「Country Blues」を一曲のなかで唄うことは不自然ではなかったということだと思います。

もっと大胆に想像すれば、歌詞が固定しておらずサンハウスやロバートジョンソンもときにはこの歌詞を唄っていたのかもしれません(それは楽しい想像です。もしあるものなら聴いてみたい)。

ロバートジョンソンの録音はいま発売されているものしか見つかっておらず本当のところはわかりませんが、当時の状況を覚えている人もまだ生きていることだしそのうちなにかのヒントが見つかるかもしれません。

なおロバートジョンソンの歌詞中「blow my lonesome home」は文字通り「この家を吹き飛ばす」と訳しておきましたが、「この家を出て行く」という意味かもしれません。どちらか決めかねたのですが日本語で書くとその次の行と同じようになってしまうので最初のほうを選びました。

実は、最初は「blow my lonesome horn(淋しい角笛を吹き鳴らす)」と聞いてしまい、なんだか意味がよくわからないけれど農園でのホラー(伴奏なしでひとりで唄うブルースの原型)のことでも言っているのかいなと思っていました。聞き直したらどうやら「home」と歌っているようです。二行目の「gone」とは「horn」のほうが韻が合っているので、これも暫定訳です。

窓のない(外が見えない)貨物車を「blind」と呼んだといいますから、「ride a blind」は貨車に密航することでしょう。言葉の響きとして「盲滅法乗り込む」「何処へ行ってもかまわない」というニュアンスも感じられる気がします。

「Elgin movement」も謎ですが「(彼女の部品は)エルジンの時計のようによく動く」という説があったので採用しました。「break in」は「(馬などを)調教する」なので「1ドルあれば調教できる」ということでしょう。「anywhere she goes」は「場所(相手)を選ばない」ということを、韻を踏むためにこういう言い方をしているのだと思います。

他の曲同様、この英歌詞と訳についてはフジウラの(寄せ集めの知識による)個人的解釈なので、信憑性はありません。あらためてお断りしておきます。

ポールバターフィールドバンドはハープを中心としたグループなので、FGODでは音が足りない部分もありますが、音が少ない分だけソリッドに演奏できればと思いながら演っています。



Walkin' Blues
(Paul Butterfield Band Version)
歩き回るブルース
(ポールバターフィールドバンド版)
Woke up this morning I looked around for my shoes
You know I had those mean old walking blues
朝起きたら靴を探さなくちゃならない
いつもの「歩き回るブルース」が居ついている
Some people tell me that wearing blues ain't bad
It's the worst old feeling I most ever had
ブルースと暮らすのも悪くないという奴もいるが
それは俺の知る限り最悪の気分だ
Brooks run to the ocean, Ocean runs to the sea
If I don't find my baby Lord bury me
小川は海へ 海は大洋へ
あの娘が見つからないときは 主よ 俺を埋めてくれ
Minites seem like hours, And hours seem like days
Sence my baby started low down ways
分が時間のようだ 時間が日のようだ
あの娘が俺に冷たくなってから



Walkin' Blues
(Robert Johonson Version)
歩き回るブルース
(ロバートジョンソン版)
Woke up this mornin' feelin' round for my shoes
You know about 'at(=that) I got these old walkin' blues
朝起きたら靴を探さなくちゃならない
あの「歩き回るブルース」が居ついている
Lord, I feel like blowin' my old lonesome home
Got up this mornin' my little Bernice was gone
神様 こんな淋しい家は吹き飛ばしてしまいたい
朝起きたら愛しいバーニスはいなくなっちまった
Leavin' this morn' if I have to ride a blind
Babe I been mistreated, baby and I don't mind dyin'
朝になったら逃げてしまおう 列車に飛び乗って
俺は酷い仕打ちを受けた もう死んでもかまわない
Some people tell me that these old worried blues ain't bad
It's the worst old feelin' I most ever had
ブルースも悪くないという奴等もいるが
俺にとっては最悪の気分だ
She got an Elgin movement from her head down to her toes
Break in on a dollar most anywhere she goes
あの娘はエルジンの時計のようによく動く 頭の先から爪先まで
1ドルもあれば どこでだって乗りこなせる

CD
Robert Johnson
Paul Butterfield
Walkin' Blues

楽譜
Robert Johnson
Paul Butterfield
Walkin' Blues

資料


Country Blues



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