Zamboanga
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この港からどこかに旅立ちたい。
本能が、そう誘っている。

ザンボアンガ港の夕景 ザンボアンガはひとことでいえば「田舎の港町」だ。
マレーシアから、インドネシアから、フィリピンの島々から荷物と人がやってくる。海運会社がいくつもあり、店の前に船便の知らせが貼り出してある。

「来週の月曜出発 セブ経由 横浜行」。SASEBOと背中に書いたTシャツを着て、赤銅色の男が通り過ぎる。この町と日本の港は小さな貨物船でつながっているのだ。

港では色とりどりの服を着た家族が船を待っている。貧しいが服の色は多彩だ。船着き場は陽光がまぶしい。逆光になって港を見つめながら、倉庫のように暗い待合室のなかでみんな何時間も船を待っている。最初に乗ったものが船中良い場所を占めることができるからだ。


サンダカン行き航路の広告 港の入り口に新しい大きな看板が掲げてある。
「サンダカン行の船が週2回に!」。誇らしげなその広告の主は「サンパギータ海運」という船会社だ。

「ここからサンダカンまで船で行けるのか」
それは、なにかとても魅力的なものに思える。

サンパギータ海運は、市役所のすぐ前に事務所を構えていた。一等地である。この町での地位の高さがうかがえる。入り口に安いチケット客のカウンター、奥に高級客室の応接セットがある。事務所のなかを小銃を持ったガードマンが歩き回っている。

船室のクラスは4段階だ。
エコノミー  300ペソ   ビジネス  800ペソ
ファースト 1200ペソ  マハリカ 1500ペソ

迷ったが、エコノミーにした。国境を越える30時間の船旅が960円である。船底に詰め込まれて雑魚寝でのたうちまわることになるのだろうか。


c 1998 Keiichiro Fujiura


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