市場に変な楽器屋があった。ホーン(拡大装置)付きのバイオリンなどが売っている。手工芸品のような6弦マンドリンを買う。チューニングはギターと同じだからなんとか弾ける。貝殻細工が象嵌されていてなかなか美しい。弦も手作り。針金のような弦だ。 |
本体4000K。ビニールケースと弦2組を付けて5000K(2000円)。チャットを持て余しているので、値切りもせずに買う。表板は合板ではなく一枚。ネックを後から取り付けたボルトオンタイプではなく、ネックまで同じ材から取ったスルーネックである。 この店で作ったものらしく、ケースに店の名前の入ったシールを貼ってくれた。フレット音痴だしチューニングも狂いやすいが、弦を下に押し下げる民族音楽特有のベンドもできるし、音色自体にエスニックな味わいがある。これは私にとっての「ビルマの竪琴」だ。 |
楽器も買ったし、酒は実物を見せろと言われたので一度取りに戻る。 |
さて酒瓶をリュックに積んで市場を回るのだが、これが売れない。さっきのオヤジともう一度交渉するのも気分が進まないので他の店に売ろうとしたのがいけなかったか、どこに行っても買おうとする者がない。 |
酒は1リットル瓶だからけっこう重い。それを背負って行商しているのも疲れてきた。 |
重荷を背負って歩いていたら妙な爺さんが近寄ってきた。ジェムストーンの入った小箱を持っている。小さな石が20個ばかり並んでいるが、どう見てもたいしたもんじゃない。 この国では露天や屋台の宝石屋があるのだが、そこに並んでいる駄石よりもっとレベルが低い。カス石である。 しかし、この石のほうが瓶よりは軽い。 私はバックパッカーからジャックダニエルズ1リットル瓶を出して「この酒と交換しよう」と爺さんに言ってみた。爺さんは酒瓶を見て眼を丸くしたが、判断できない。この酒がどのくらいの価値のものだかわからないのだ。爺さんは近くにいた男たちに「この交換は得か?」と相談している。男たちは大きくうなずく。爺さんは酒瓶を抱えて去っていった。 |
そのジェムストーンをホテルで見たら、案の定ひどいものだった。表側こそいくらかきれいだが裏側は色もついていないものがまじっているし、目立つ2、3個はともかく、残りの17個はただの小石だ。 この石は帰国してから子供にやってしまった。煙草は、自分で吸わないのでホテルの従業員のチップにした。たぶん高額のチップということになったのだろう。 |
ともあれ。重い酒瓶がなくなったので、散歩を続ける。 |
市場の狭い通路を抜けたら、ぎっしりと人が立っていた。それもインド人ばかりである。満員電車の中のように道にインド人が立ちつくしていて、身動きが取れない。これはどういう状況なのだろう。土が小高く盛り上がっているところがあったのでそこに登ってあたりを見るが、どうやらここはインド人の市場らしい。 それにしてもこの混みようは何だろう。しかたがないので先ほどの通路を逆戻りする。 |
ミャンマーの市場は謎でいっぱいだ。それにしても酒瓶は重かった。 だいたい金持ちな国の人が貧乏な国の人に物を売って儲けようというのが間違いなのである。 |
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