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西へ。西へ。 デッキにベッドを並べておけるほど海は静かだ。 目的地は夕陽に向かって真っ直ぐである。 しかも適当な感覚で島が見え隠れする。これなら小舟でも海峡を渡ることができるだろう。 古代からの海の街道だった ことがよくわかる。 右舷に広がるのがスールー海。進路に連なる島をはさんで、左側はセレベス海だ。船内の売 店でビールを買ってきてデッキで飲む。 |
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夕刻が来ると、ごろごろしていた男たちが急に起き上がり帽子を被り始める。イスラムの祈りの時間だ。 船のなかでも律義に習慣を守ろうとする。ベッドの上しか自分の場所はない。おのおの自分のベッドの上でメッカの方 角に祈る。ちょうど船首に向かって、揃ってひれ伏すかたちになる。 そうとう異様な光景だと思うが、他の乗客は平然としている。見慣れたものらしい。 |
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