Bangkok
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マッサージのついでにパッポンへ
ひさびさの酒場街を梯子する。

「ボディケア」は「有馬温泉」の近くだった。変な名前だがこれも有名なマッサージ屋である。どちらにしようかちょっと迷ったが、雑誌を信じてボディケアにする。280B(840円)+チップ100B(300円)。風俗街の近くにある高級店にして「1時間1000円」の基準価格より安い。これが首都バンコクにおける最高価格だろうから、タイのマッサージがいかに安価かわかる。

タイ式マッサージは実に完成されたシステムだ。「足首を重ねて上から伸ばす」導入部から始まって締めの「両足の上に乗せて背中を伸ばす」大技まで体系的にやってくれる。足の裏が皮のサンダルで汚れているのに構わず足揉みもしてくれたので、恐縮してチップ100Bをプラスした。

マッサージ店から出れば、そこはパッポンだ。

パッポン通りは様変わりしていた。この前に来てから何年になるだろう。当時は銀座の裏通りくらいの道幅があって、そこをボディコンのお姉さんが闊歩していたものだ。ちょうど東京でもピンキー&ダイアンの全盛期だった頃でその影響が顕著だった。

いまやパッポンの仲通りは夜店化していた。クアラルンプールの中華街ほどではないが、通りの真ん中を売り物の山車が占め、左右は狭い。左右の怪しい店は以前とあまり変らないが、その間の空間がなくなったのでより騒がしく余裕なく感じる。

行商から物を買う パッポンの周りには化粧品店が多い。髭剃り用のシーブリーズとガムとミルクを買う。85B(255円)。いくぶん「人が安く物が高い」感じはする。


実をいうとさっきからちょっと腹具合がおかしい。チップ5B(15円)を払って雑居ビルのトイレへ行く。たぶん昼間のオイスターサラダのせいだ。牡蠣が痛んでいたのではないようだ。スパイスがきつすぎて内蔵を刺激したのだろう。

とはいえずっとイスラム圏に居てまともな酒場街はひさしぶりだし、きのうは夜汽車で酒抜きだ。酒場の顔を見て素通りもできない。ちょっとは飲んで帰りたい。

まだ時間も早いしとりあえず晩飯にしたいが現地の食事はみんな刺激物だしどうしようか思案していると、日本語の看板がちらほらある通りがあった。バンコクに来て日本食かとも思うけれどまあ少しおとなしい食事をしたほうがよいかもしれぬ。

タニア通りの、東京と同じような構えの居酒屋に入る。メニューの字を見るとそそられるが味はつまらないお通し(ポテトサラダ、レンコンのきんぴら、おしんこ、もろきゅう)で生ビール一杯を飲んで500B(1,500円)。早々に店を出る。他に一組、ゴルフ帰りの駐在サラリーマンが赤ら顔をしていた。

ようやく夜になったのでゴーゴーバーを冷やかす。ビール一杯90B(270円)。一緒にどこかに行こうと誘ってくる娼婦たちの誘惑に乗らなければごく安い酒だ。

店の2階でのステージショーが以前よりずっと過激になっていた。最初は驚くが慣れるとなんともない。花電車もただの風景となってしまう。暗いところにいると美女に見えるたくさんの方々の勧誘をお断りしながら、数店梯子する。

寺院の茶店 外へ出ると道で売っているエスニックファーストフードの煙を嗅いだだけで気分が悪く、頭を振って煙を避けるようにして歩く。

うーむ、普段は大好きなのに。思ったよりまいっているようだ。

通りに出て帰りの値段を交渉する。タクシー150B(450円)、トゥクトゥク100B(300円)。トゥクトゥクを75Bに値切って乗り、降りるとき小銭がなかったので80B(240円)払う。

こんなもの値切っても酒や日本食に比べると大勢に影響ないのであるが、基本フォームとして値切る。


安ホテルの部屋は居心地が悪い。眠るときは根性で寝てしまうが、起きているときはどうにもしようがない。各ホテルの1階はおおむね酒も飲めるレストランになっているので、手紙ひとつ書くのでもそこのテーブルを使っている人が多い。

泊まっているサイアムオリエンタルの1階もそうなので、そこのバーで寝酒を飲む。ジャックダニエルスにソーダを入れて1杯100B(300円)。妥当な値段はこんなものだろう。

もう12時を過ぎているのだがまだ通りは賑やかだ。

バーでは下手糞な地元バンドがCCRを演っている。それはまだよいのだが酔っ払ったヒッピーがそこにあったコンガを叩く。全然合っていない。まあご愛敬である。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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