ふじうら旅日記

6日目 その3






ヘレナに入ったが、フェスティバルの場所がわからない。ガススタンドの売店で聞きとりにくい南部訛りで道を教えてもらう。「方向はこっちなんだけど、この道はワンウェイだから」。なるほど。それを聞いてヲサム君が、じゃあ「きっとこう行けば着くはずですよ」とピタリと到着させた。偉い。パチパチ(拍手)

ブルース・フェスにやってきた
古い、西部劇の町のような一角がブルースフェスティバルの会場になっている。このあたりは景観保護地区で、新しい建物を作ることは許されず、それを利用してイベント会場にしているそうだ。急作りの駐車場にクルマを入れ、一日分の駐車代を払う。係員は近所のお婆さんだ。
「アメリカの縁日」という感じで、道の真ん中にいくつもフードカーが並んでいる。ピーカン・パイ、フィッシュパイ、BBQ、ターキー、出し物はいかにもアメリかっぽい。誰に目があってもニコニコして、話をすると「遠いところを良く来たな、楽しめ」。遊園地に来たようにワクワクして自然に早足になる。
まるでアメリカの「縁日」
受付でドネーション(寄付金)を5ドル渡し、会場地図を貰い、別にチケットを買う。このチケットで飲み物や食べ物を買う仕組みだ。もちろん価格はお祭り値段なので、よく見ると自分の飲み物持参の人も多かったが、主催者側は一応「持ち込み禁止」という態度を取っていた。

雨対策も十分な観客
会場は、学校の校庭よりもっと広いくらい。ゆるやかな土手になっていて、土手の上には鉄道線路があった。その土手から見下ろす位置にステージが設営してあった。さすがアメリカのステージングで、田舎とはいっても照明もPAもちゃんとしている。
私たちが到着したときはジャクソンから来たという二人組みがやっていた。アコースティックギターとスプーンカスタネットのデュオ、というジャグバンドっぽいノリのデュオで、まだ「前座」という感じ。それでもスプーンカスタネットはいくつか「飛び道具」ともいえる妙技を持っていて、ときおり客を沸かせていた。
ジャクソンから来た二人組

二人ともゴキゲン
線路の上に座ってビールを飲みながらステージを見る。列車が走ってきたら大惨事だが、どうやらそういう心配はないようだ。気分がいい。これで雨さえ収まったら最高なんだけどなあ。
今日は初日で、有名バンドも出ないし小雨も降っているので、まだ客はあまり多くない。会場の垂れ幕のスポンサーにはIsle of Capri(カジノ)の名前。KFFAと地元のテレビ局が取材に来ている。

キング・ビスケットというのはこのあたりの小麦粉メーカーだが、ブルースファンには特別の意味を持つ名前だ。地元のラジオ局KFFAで毎週流されていた「キング・ビスケット・ブルース・タイム」という番組はソニーボーイ・ウィリアムスンことライス・ミラーがDJをつとめ、マディ・ウォーターズなど多くのブルーズメンが出演して有名になるきっかけとなった。その番組の残した財産のひとつがこのフェスティバルなのである。
キング・ビスケットのテント
ヘレナの町には白い瀟洒な洋館が多い。ミシシッピ側の港町。綿花運送の拠点として栄えた時代もあったのだろう。「Every Dog Has His Day (誰にも一度は良い時がある)」という言葉を思い出す。

ときおり雨が強くなる
雨が強くなったので、一旦広場を離れて建物のほうへ行く。安普請の食堂のようなところでギターデュオをやっていた。飲み物は5ドル。つまみのタマレスとナチョスが妙に美味かった。
その店のギターデュオは白人で、やたら声を張り上げるばかりであまり上手くはなかったのだが、突然サム&デイヴの「ソウルマン(ブルースブラザーズスタイルの下手なコピー)」を始めたので、昨日この曲のCDを買ったばかりのヲサム君は非常に喜ぶ。

この旅の最中、「古い曲のCDを買うと、その直後にその曲をライブで聴く」という体験が何度かあった。南部では「古い曲」ではなくていまでも現役の曲なのだろう。ジャズのように、ブルースやR&Bの曲も演奏され続けるスタンダードになっている。
いちばんよく飲んだビールはMichelob




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