帰国後






ブータンへ行って思ったことはいくつかあって内容もさまざまです。3つほどに整理してお話することにします。

(1) ブータンって、どんなとこ
(2) ブータンに行って自分が変わったこと
(3) サラタビについて


(1) ブータンって、どんなとこ

ブータンは秘境ではない。

まず最初に言えることは「ブータンは秘境ではない」ということです。もちろん、奥地に行けば秘境は残っているでしょう。でもそれは、例えばインドネシアやミャンマーにも言えることで、ブータンだけが秘境ではないと思います。これまでの鎖国政策や伝統保存政策のために秘境イメージが強いですが、少なくともガイド付きで外国人が数日で行ける範囲はまったく秘境ではありません。

案外、年寄りに向く観光地。

今回祭り(ツェチュ)の季節だったのでそれなりに目的があったわけですが、そうでないときに行ったら何を見るかというと、つまりは「お寺」と「田舎」です。山が好きな人にはトレッキングという手があり、染色や織物が好きな人にはそれなりのテーマがあると思いますが、そういう趣味のない人にとってはあまり変哲のある国ではありません。比較的素朴な人たちとの触合いが楽しい、日本の昔に似た風景がうれしい、ということはつまり案外高齢者に向く観光地ということになります。現状のシステムですと入国から出発まですべて送迎車が付くわけですから歩かないと決めたらまったく歩く必要はありません。欧米の観光客(だいたい年寄りが多いものですが)など、足元が不自由なくらいの人が平気で来ています。案外、年寄り向きの場所です。

たぶん、バリ島のようになっていくんだろう。

ツェチュの動物の面をかぶった踊りなど、わかりやすいエキゾチズムがあり、外国人が行く範囲だけであればそう不潔でもなく、山岳アジアを楽しむにはよい場所です。インドの影響が強いせいか白人には従属的な性格もありますし、西欧人観光客には居心地のよい国でしょう。バリ島のような「アジア情緒を手軽に味わえるアミューズメントパーク的観光地」になっていくんだろうと思います。


(2) ブータンに行って自分が変わったこと

行っている間はさほどでもなかったのですが、帰ってきてから仏教関係の本をよく読むようになりました。最初は「チベット仏教」「曼荼羅の見方」「アジアの仏教遺跡」などをを読み始めたのですが、次第にその影響を受けた日本の「真言密教」つまり弘法大師の本を読み、その相手として天台宗最澄の伝記なども読むようになりました。

これまでも仏教に関心はあったのですが、特定の宗派に属しているわけでもなかったので、なんでこんなにたくさんの宗派があるのか、釈迦の言葉だけでいいではないかと思っていたのですが、最近はなんとなく多くの経典、多くの宗派がある理由がわかってきたようにも思います。とはいってもこれは真言宗の整理によるものを読んだだけなので他の宗派の人には異論があるでしょうし、私もまだ学び始めたばかりなので、大層なことを言うつもりもありません。

インドネシアで見たボルブドゥールが「巨大な立体曼荼羅である」というのも今度帰って読んだ本の中で知ったことですし、ブータンにも多い歓喜像(女を抱いている仏像)が、密教にある理趣経とつながりがあるらしいことも、帰ってきてから(もちろん本で読んだ知識としてだけだけど)知りました。

そういう意味ではブータンそのものよりも、ブータンで見た仏画に。正直言って「あまりにも理解できなかった」ことに影響を受けたのかもしれません。個人的に言えば家族を失ったばかりで旅の間やや不安定な精神状態であったことも、いまになってみれば仏縁だったのかもしれません。

秘境だと思って行ったのに、そのわりに開けていたり、外国人から金をふんだくろうという価格体系になっていたり、がっかりしたことは多いのですが、その後でもテレビのニュースでインドの会議に「ゴ」を着たブータン代表がいる映像を見るとなんか懐かしいような応援したくなるような気がしますから、帰ってみればかなり好印象が残っています。自分としては得るところの多い旅だったと言えるでしょう。


(3) サラタビについて

「次はどこに行こう?」と、ときどきヲサム君と話します。「変わったところへ行くんだろう」という周囲の期待もある、ようなのですがだからといってその期待に応えるために場所を選ぶというのもなんだか本末転倒のような気がします。自分としては、むしろ「週末プラス一日で意外な近郊へ」みたいな実現可能なものもサラタビにふさわしいかなあなどと思っています。お金も時間もあんまりかけずに楽しむのがいいんじゃないかな。

たぶん遠からず次のサラタビをすることになると思います。ひょっとしたら今回の旅で一緒になったコバヤシ夫妻を誘うかもしれない。そのときはまた書きます。ぜひまた。旅の話を読みに来てください。




表紙へ
表紙へ
サラタビへ
サラタビへ
目次へ
目次へ
GO PREVIOUS
前へ
GO NEXT
次へ