高校生の頃の愛聴盤はジャニスジャプリンの「チープスリルズ」とハービーハンコックの「処女航海」、それとフィルウッズ&ヨーロピアンリズムマシンの「アライブ&ウェル イン パリス」でした。基本的な好みは今もその頃と変わっていません。
「アライブ&ウェル」は熊本下通りにあった「TARO」でよくでかい音で鳴らしてもらったものです。B面一曲めが「Freedom Jazz Dance」。この曲を初めて聴いたときは吃驚しました。まるで現代音楽のような音列です。
オリジナルはEddie Harris〔写真)。バップ系サックスのこの人がなぜこんな曲を作れたのか不思議です。たぶん最初は四度跳躍の練習フレーズとして思いついたんじゃないでしょうか。
この曲の基本音列は四度上行です。テーマはF-Bb-Ebという音で始まり、Eb-Ab-Db-Gb G-DbCAb-Bb-Bbという音で終わります。ギターやベースが苦手な「別弦同フレット」という動きです。ブルースとはまるで違うスケールでして、ブルースバンドとしては苦労するところです。
そのうえメロディに「食い」が多く、どこが頭か尻尾かわからりません。コツとしては「最初の二つの音は前の小節の4拍めである」こと、そして「最後のブロックの最初の音(Eb)は4拍めの裏である」ことを理解することです。
多くのジャズマンがカバーしています。Chick Corea,Miroslav Vitous,Jaco Pastorius,Ben Sidran,Great Jazz Trio,そしてMiles Davis。モダンな人が多いですね。日本のライブハウスでも本多俊之バンドなどでよく聴くことができました。PONTA BOXもモントルーで演っていましたね。
この曲については「ベースは五度を弾くな」と言い伝えられています。よくわかりませんけどもたぶん「普通のコードの響きにするな。四度感を強調しろ。」ということでしょう。コードはルートBbを中心にF-Bb-Eb-Ab、すなわち「Bbsus4」と割り切ってしまえばワンコードということになります。
ワンコードの曲は「テーマさえ弾ければなんとかなる」と大学のジャズ研の連中などにいささか軽く見られることもあります。言うまでもないことですが「テーマを弾ける」というのはその曲の入口に立ったというだけのこと。誤解してはいけません。ひたすらドライブして、この曲の持つ「硬質な美しさ」を表現したいものだと思います。
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